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「山梨県一日目に鍵を忘れる」


「山梨県一日目に鍵を忘れる」

 

 

台風が過ぎた次の日、新宿から山梨県に向けて高速バスで旅立った。

万事良好で道路も空いていて、スイスイと進み、須玉停留所の到着予定時刻にはちゃんと着いた。

しかし、トラブル発生!

道中終盤の休憩所・双葉サービスエリア辺りで、キャンプ場の鍵を持ってくるのを忘れたことに気がついたのだった。

一瞬顔面蒼白になり、「あ~!やっちまった。」と。

これでは、また3時間かけて東京にとんぼ帰りしなくてはいけない。

山梨に来てすかさず東京に帰るなんてなあ。。。

そう思って、須玉停留所で到着予定時刻の1039分頃に降りた矢先、若神子村の生徒さんRさんからそのタイミングで偶然電話が来た。

「今どこですか?5分か、10分で行きます。」

何という偶然中の偶然だろうか。。

神様の救いだと思った。

そして私たちは、近くのスーパーで落ち合うと、久しぶりの笑顔を交わし合った。

何の打ち合わせもしていないのに、こうやって親友と巡り合うとは、神様の計らいを粋に感じたのだった。

そして、鍵を忘れて東京に帰らないといけない旨を話すと、彼が施錠屋に来てもらったらどう?と提案してくれた。

そうか!その手があった。

そして急遽ネットで調べて施錠屋に電話すると、鍵を開けてくれるという。

もし3000円くらいで済むのならやってもらいたいなと、見積もりを出してもらうために折り返しの電話を待つ。

その時、スーツケースを開けると何とキーケースが入っていた!

相変わらず私は用意がいいな、と自分で感心し、中を開けると知らない鍵が混ざっている。

あ!もしかしたら、これがキャンプ場の鍵かもしれない!

その鍵で開くかどうかを試すために、Rさんに芸術村に車で送迎してもらうこととなった。

 

芸術村に着いて早速鍵を試すと。。。開かない。。。

あ~違う鍵だったか。。。!

諦めて施錠屋にもう一度電話する。

すると見積もりが返ってきて、何と鍵開け料金が25000円だという!

持ち合わせはあったが、それじゃ割に合わないので別の手段を考えることにした。

 

そして彼がまた提案してくれて、明日着のレターパックでスタッフに鍵を芸術村へ送ってもらい、どこかに泊まって明日まで過ごしたらどうかと言ってくれた。

そうすれば、安く済む。

東京に帰ってからまた山梨に来るのだって6000円かかるわけだが、同じくらいの値段で安ホテルに泊まれば経費は変わらないし、何より楽だ。

そう思ってネットやアプリでホテル探しをすると、3500円のホテルを韮崎に見つけたのだった。

これで良いじゃん、これにしようと。

 

ひとまずそう決めたら、Rさんが家に招待してくれて、奥さんに手作り牛丼と自家製ラッキョウ・梅ジュースをご馳走になった。

彼は私の弟子で、全国公募の新構造神奈川展に山梨県から出品を決めてくれて、その出品作品の最後の仕上げや額ぶちについてのアドバイスを私から聞きたがっていた。

その最終調整も兼ねて家に招いてくれたのである。

彼がうちに泊まらないかと提案してくれたが、私もiPadで落ち着いてやる仕事があり、プライベート空間が必要だったので遠慮した。

そして、やっぱり決めたホテルに行くことにしたのだった。

彼と作品の最終調整の話を牛丼を食べながらして、その後、彼の愛犬・ホーリーくんの川沿いの散歩に30分ばかり一緒に出かけた。

 

そして帰って来ると、彼がまた車を出してくれて、ホテルまで送迎してくれたのである。

ああ、Rさんに感謝の限りである。

 

そうこうしてホテルに着くと、もうバタンキュー。

昨日の深夜からのハードなデジタル仕事の疲れもあり、今日のアクシデントの気疲れで一気に寝てしまった。

1時間ばかりしてオーナーからの電話で起き、今日届くはずのジンギスカンはどうなった?と聞かれて、まだ宅配業者に連絡できていないと答えて、それじゃダメだと叱られる。

そしてヤマト運輸の須玉地域のドライバーの携帯電話をネットで調べ上げ、明日の夕方以降に持ってきてもらうよう打ち合わせをし、やっと一安心して深い眠りに就いたのだった。