「インチキ読書家」
子供の頃から、本当は読書なんか好きじゃなかった。
でも今、本を読むのを渇望してしまうのは、私が芸術家になったからである。
知識もいれば、頭を鍛える必要もある。
それには読書は必要習慣なのだ。
とはいうものの、毎日が忙しすぎて、なかなかまとまった読書ができていない。
このままではいけないなあ、と思いながら「1ページ読書」だけは続けている。
「1ページ読書」とは、家のそこら中に本を置いといて、気分で取った本の気分でめくった1ページだけを集中的に読む、という私の編み出した時短式の読み方である。
それを一日の間に何十回と繰り返すわけだが、案外これが私の性分にあっていて、私のさまざまな思想や思考方法を生み出す母体となっている。
そして、読書とは読むことに意義があるのだが、私はその本を掴んで持ち上げるその動作も好きなのだ。
ああ、本を背表紙ごと鷲掴みに掴んだ時の感覚。
本の山から一冊抜き出して、手に取って誇らしげにページを開ける時の感覚。
そして目に映った文字をこの目で確認している時の知ったかぶりの高揚感。
その時誰よりも賢くなったような気分がして、本って結局読むよりもそれが好きなんだなあ。
まるでインチキ読書家だな、私は。
まあ私は、誰よりも小さいそういう身分で良いのだがね。