「クリスマスに大喧嘩」
クリスマスは世界平和の祭典である。
しかしうちにはこの日、平和がなかった。
クリスマスに親子喧嘩して、父に「家を売って、母と二人で出ていく。」と言われたのである。
そんなことカーっとなった勢いで言うこと自体が間違いなのだが、私は世界最悪のクリスマスを迎えたわけだ。
冗談でも言うセリフじゃない。
教会のクリスマスミサから帰ってきてから、両親と彼女と私の4人でクリスマスパーティーをした。
パーティーのケーキは私がみんなのために朝10時に45分も並んで買ったスペシャルなホールケーキだった。
そこで私が父親が昔振るった暴力でいかに心が傷ついたかを、大人になった今初めて暴露したのである。
酒の勢いもあったが、そのことを父に今でも覚えてもらっていないと、やられ損のままだからだ。
父は、お正月の挨拶の場において愛する祖母の前で、「こいつは馬鹿ですから。」とニコニコ笑って幼かった私の頭を拳骨で強くぶん殴ったのである。
それは謙遜の意味だったかもしれないが、いきなり殴るなんてひどいじゃないか。
私がそう告白すると、俺はそんなことしてねえ、と父は言う。
ムキになってやってないと言い張った。
いや、したからこそ私の一時期は悶え苦しみ、陰惨な幼少期を過ごしていたわけなのだ。
父が私に手をあげたことも本人が忘れてしまったようじゃ、非常に悔しいじゃないか。
そこで、やった。やらない。の応酬が父と私の間で始まり、大げんかに発展した。
何やってんだかな。
キリスト様は。
殴った方は忘れても、殴られた方はいつまでも覚えてる。
いじめられた人がいじめた人に、罪の追求をすると、いじめた人は都合よく知らんぷりするんだなと、今日正直そう思った。
しかも、自分を怒らせたからと言って、家を売って私の住処をなくすことにまで父は言及した。
こうしてまた私は傷を受けて、嗚呼、クリスマスから苦しみます、だな。
と思ったわけだった。
世界の平和のために教会ミサで祈った後に、家庭内で不合理ないじめに遭う。
まあ、ヒーローってそんなものさ。