ESSAY
「絵画作品の評価について」
「先生、絵を見てください!」
そう言って私に絵画作品を見せてくる人がいますが、私は決して批判しないように心がけています。
その人の持っている良い部分を指摘してあげることしか致しません。
その人の後の芸術人生を大切にしたいし、良い長所をこれからも伸ばしてもらいたいからです。
悪いところにも少しは触れますが、そもそも「悪い」と言ったってそれは「私の美的価値感から生ずる悪さ」に過ぎないのですからね。
私が悪いと思っても、他の先生には良い場合だってあるのですよ。
さて、絵画とは「①色と②形と③構図と、④要素の構築性」この四つで判断します。
それらの要素の様子は、実は作品を評価する先生によって、違います。
なぜなら、先生も作家であり、1人として同じ作家はいないからです。
青が好きな作家もいれば、赤が好きな作家もいる。
丸が好きな作家がいれば、四角が好きな作家がいる。
ど真ん中が好きな作家がいれば、分散されているのが好きな作家もいる。
そういうふうに、自分の好き好きが分かれるいろんなタイプの先生がたくさんいるわけです。
さて、絵とはなんでしょうか?
私に言わせれば、「作者の心」です。
これは一つの絵を構成する「④要素の構築性」によって表されます。
私の評価の仕方について言いますと、①②③は人の好き好きなのであまり重視しておらず、重視しているのは「④要素の構築性」になります。
言ってみればそれがあるから、「作家の心」が表現できるからです。
色や形は調和しているのが良いとされ、構図は黄金律であるのが良いと言われています。
しかし果たして、色も形も調和しない、構図のバランスの悪い作品は、ダメなのでしょうか?
そんなことは全くありません。
実は、「④要素の構築性」によってとんでもない偉大な作品に化けるのです。
例えば絵心のない子供の作品がすごい場合がありますよね。
お母さんを描いたり、お父さんを描いたり、バスや電車を描いたりと、色も形もぐちゃぐちゃ。
でもなんかすごく良い。
それは、要素の構築性によって「子供の心」を表現できているからなのです。
絵を見て心動かされるのは、作家の心が伝わりやすく表れているからです。
そこを私は重視します。
絵は心であり、感動しなくては、良い作品とは言えないからです。
だって、見て分かって感動するから芸術なんですよ。
それを忘れちゃいけない。
難しい論理だけで構成される芸術の世界は、言ってみれば評論家の世界です。
論理に始終して、絵の持つ感動を心で体験するよりも、頭でわかろうとする。
これが、絵をダメにする原因の最大のものです。
私は絵画作品を評価する場合、論理に一番気をつけています。
だって論理って結局、空論なのですから。
世界四聖人の一人と言われている偉大な哲学者ソクラテスも、論理は結局「フィクション」だ、という内容を語っております。
結局、絵の評価とは、見て分かったものを素直に喜べばいいだけなんですよ。
私は、その絵の作者の「心の伝わり具合」を、最大に評価します。
【俳句】
・絵は心 語るや美術 展覧会
・晩秋に 心語るや 絵の子らは
・十六夜(いざよい)に 臼片付けや 白うさぎ
・絵と心 月の光に めぐらせて
・展覧会 作者の心 磔や